年長の時、娘の友達が塾に行きだしたり、通信教育をはじめたりしていました。まわりに流されやすいタイプの私も、何かやらなくては、、、、と焦って入学準備用ドリル的なものを買ってはみましたが、娘はそういうものが大っ嫌い。数ページは一緒にやったものの、「つまんな~~い。」「やりたくな~~い。」と真っ向から拒絶されました。挙句の果てには、「勉強やだ~」だって。
小学校に入る前から「勉強やだ~」なんていう負の感情をもってもらっちゃ困ると、ドリル系はやめさせました。
そんな状態だったので、「たす」「ひく」の記号の意味もよく分からないまま小学生になりました。それでも、今のところ学校の授業にはついていけているようです。
「入学前にドリルやらなかったけど、娘ならきっと大丈夫」と私が思えたのは、心の処方箋となるさんすうの絵本があったおかげ。そんな、幼児期に読んでよかった絵本をいくつか紹介します。あと、買いたかったけど節約のため泣く泣く我慢した絵本も紹介します。
はじめてであうすうがくの絵本/文・絵 安野光雅
- 作者: 安野光雅
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1982/11/20
- メディア: 単行本
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1巻
- なかまはずれ
- ふしぎなのり
- じゅんばん
- せいくらべ
2巻
- ふしぎなきかい
- てんてん
- くらべてかんがえる
- かずのだんご
- みずをかぞえる
3巻
- まほうのくすり
- まよいみち
- きれいなさんかく
- みぎとひだり
引用:表紙絵 タイトルより
例えば、
しかくのいろがみを さんまいならべたら このように さんかくが ひとつできました
というように、簡単な言葉を用いながら絵で算数の不思議や面白さを紹介してくれます。
もともと、遠山啓さん監修のもとかがくのともで作られた「はじめてのすうがくのほん」シリーズをまとめたものです。
著者の安野光雅さんは、美術教師や小学校教師をされていらっしゃいました。図工の指導書なども書かれていた時代があるなんてびっくりです。図工の指導書は私にとってとても身近だったので、急に親近感がわきました。教職を辞した後は絵本作家・画家として活躍されています*1。特徴的な小人さんのイラストはなんだか懐かしく私は大好きです。
個人的には、全3巻セットより、先ほど紹介した、かがくのとも「はじめてのすうがくの本」シリーズ▼の方が、たくさん事象が紹介されていて好きです。でも、もう絶版で図書館でしか見ることができませんでした。(と、書きながらAmazonをチェックしていたら中古で販売されていることに気づき、ぽちっとしたい衝動に駆られています)
振り返れば3~5歳くらいの時に、娘は夢中になって読んでいました。算数というより、クイズ、絵本という感覚で楽しんでいたように思います。しかも、図書館に、娘がちょうど届く良い場所にこの数シリーズが置いてあったのです。 自分で引っ張ってきて読んでいました。買ってあげたいな~と思ったのですが、先ほど書いたように絶版。3巻セットを買おうかどうしようか迷っているうちに、娘は大きくなってしまいました。
チャイクロ 新装版/構成・編著 高田恵以
かずとかたち 1/2/3
いろとかたち 1/2
ことばともじ 1/2
かがく・ふしぎだね
1970年に出版されたものの新装版です。チャイクロとは”child's encyclopedic picture book" の略だったんですね。訳すと子ども用百科事典絵本ですが、新装版では、数、形、言語中心の構成になっているようです。
チャイクロの新装版は、数、形、言語といった保護者の方々から変わらず求められているテーマを中心とした、子どもたちが楽しみながら考えを深めていける知育絵本
作者は、大阪教育大学名誉教授 洋画家 高田恵以さん。こちらのイラストも私は大好きです。
お恥ずかしながらチャイクロに出会ったのは年長の夏過ぎ。こちらも偶然図書館で見つけました。もっと早く知りたかった知育絵本です。「はじめてであうすうがくの絵本」と似ている部分もありますが、こちらの方が1年生の教科書にスムースにつながる印象があります。と、いっても結局は好みですよね。
娘はとりわけ「かずとかたち3」がお気に入りでした。”筋道を立てて考えることが自然に身につく、楽しい遊び”がテーマになっていて、クイズを解くような楽しさがありました。
全巻一気に購入したかったのですが、節約モードに突入している我が家としては高い。歯をギリギリしながら諦めました。こちらも、小さいうちから子どもに何度も読み聞かせできる絵本なので、もし、この本をもっと早く知っていたら出産祝いとして祖父母におねだりしたかったな~。
とけいのえほん/著 まついのりこ
幼稚園入園前の4歳の時に、時計に興味をもった時期がありました。その時に、「とけいのほん1」を。ところが、まだ難しかったようで理解はできません。その後、何回か読み聞かせているうちに自然と時計が読めるようになり、6歳の時に「とけいのほん2」を与えました。
子どもの時計の理解って面白いですね。全然分からな~い。って言っていたはずが、突然アンテナに電波が入るように「あ、分かった!」っていう瞬間がありました。それも、教えている時とか絵本を読んでいる時には絶対訪れないんです。普通に生活していたある日突然「Eureka(エウレカ)!!」がやってくる感じです。なので、この本も忘れた頃に繰り返す読むような絵本でした。
でも、まだ、理解していないこともたくさんあります。時計って奥が深いですね。
遠山啓の算数の本
かがくのとも「はじめでであうすがくのほん」シリーズ(1970年代刊行のもの)では監修に遠山啓さんのお名前がはっきりと明記されていました。ところが、1982年に出版された「はじめてであうすうがくのえほん(全三巻)」では、遠山啓さんのお名前は目立つところには見当たりません。1979年に鬼籍に入られたので仕方がないのかもしれません。でも、遠山啓さんの功績がもっと認知されたらいいのにな~という思いから、ダラダラ書きます。
遠山啓について
まず、”啓”とかいて”ひらく”と読む名前がカッコイイ。どういう方なんだろうど調べたときがありました。少しまとめてみると、
小中学校の教育現場での数学教育を指導、数学教育の改良運動に率先してその力となった。中学校の数学教育において、因数分解や幾何の証明など、あまりに難解な問題を生徒に課す事を批判していた他、日本の学校教育が、生徒に間違いをさせない事を過度に重要視するのを批判していた。
日本の数学教育を牽引する立場にいらした方です。
自由の森学園は、遠山啓の理念をもとに設立されています。いろんな方面に影響を与えた方です。
点数序列主義に迎合しない新しい教育をめざして設立されました。その理念の支柱となったのが、数学者遠山啓の教育論です。彼は、一人ひとりの違う個性をもつ子どもを伸ばしていく教育をすすめるうえで、広く学校教育に浸透している競争原理は妨げになると考えました。
また、「水道方式」という数学の学び方を発案され日本の算数教育に大きく貢献されています。こちらに、詳しく書かれています。算数に強くなる!水道方式【水道方式とは何か】
遠山啓が携わった子ども向け算数の本
数学教育で活躍された遠山啓さんですが、「かがくのともシリーズ」以外でも出版されています。
▼この「算数の探検」は1973年に出版されたものの復刻版です。
(刊行のことば)算数の探険には、たし算、ひき算、かけ算、わり算がでてきますが、なぜそういうやり方をするのかをわかっていなければなりません。…子どもたちが算数でつまずくのは、練習不足とか、子ども自身が怠けたためというより、このような急所がよくつかめないからなのです。
この本に出会った子どもたちは、他人の助けをかりないで、どんどん先へ勉強をつづけていけると思います。
▼これは、1972年の出版されたものの復刻版です
- 作者: 遠山 啓,【表紙・扉絵】長新太,安野光雅,野中耕一,萩原襄,舟木洋輔,古川日出夫,松井紀子,山本忠敬,ゴトー孟,佐藤直行,たじまたかゆき,なかのひろたか,庭なおき
- 出版社/メーカー: 日本図書センター
- 発売日: 2012/02/29
- メディア: 大型本
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- 1.どちらがおおきい?
- 2.なかまあつめ
- 3.かずってなんだ?(1) 0から5まで
- 4.わける まとめる
- 5.えあわせ でんこうニュース
- 6.かずってなんだ?(2) 6から99まで
- 7.くりあがり くりさがり
- 8.おおきなかず 100から1000まで
- 9.はかってみよう センチメートル・デシリットル
- 10.かけざんをやろう
(刊行のことば)よく遊び学べ 遠山啓
この本は、子どもたちが遊びだと思って絵を見たり、読んだりするなかで、自然と算数的な思考法というものを身につけるよう工夫してあります。どうか、たんなる子どものための絵本というだけでなく、これを読んで聞かせられる先生やおかあさんたちも、そうした眼で、ご覧になっていただきたいと思います。きっと新しい算数のみかたというものを、そこから読みとっていただけると思います。そして、遊びというものから、算数の考えを無理なく引き出すためには、やはりこのくらいの分量が必要であると考えて、非常に豊富な絵と、細かい思考の段階というものを分析した上で、小学校2年生ぐらいまでの算数を系統的に配列したわけです。
「さんすうだいすき」が幼児向けなのに対し、「算数の探検」は小学校以上が対象のようですね。二つのセットとも、すごーく気になるのですが見たことがありません。みるべき棚を見ていないのかもしれませんが、書店でも図書館でもまだお目にかかっていません。
特に、「さんすうだいすき」の刊行の言葉はグッとくるものがあります。
”遊びというものから、算数のみかたというものを、そこから読みとっていただけると思います”
いいですね~欲しい。。。
「算数の探検」は2018年現在10巻セットで30,000円を超えています。「さんすうだいすき」も、20,000円を超えています。とっても高価なので、中身を見ないでAmazonでぽちっとするにはだいぶ勇気がいります。
どこに行けば閲覧できるのでしょうか。のんびり探してみたいと思います。
▼でも、こんな絵本も作っていらっしゃいます。
この本も繰り返し読みました。数を数えられるようになったころだから、3~4歳くらいだったと思います。
ご活躍された年代は30年以上前ですが、2010年代生まれの娘は遠山啓さんの絵本にひきつけられました。時代を超えて良い絵本を作るって素晴らしいです。もっと、注目を浴びてもよいと思うので、だらだらと書いてしまいました。
おわりに
振り返ってみると、モンテッソーリ教育に登場する、「数の敏感期」がうちの子にもありました。数を数えるのが楽しくて、どんぐりをひたすらいじっていた時期がありました。そんな時に、紹介したさんすうにまつわる絵本をたくさん読んでいたと思います。
ところが、途中で急激に数に対する興味がなくなってしまったのです。そして、気が付いてみたら小学校入学目前!仲のよいお友達がスラスラと繰り上がり足し算をしているのを見ると、親子でドキドキしたものです。娘は「○○ちゃんすごーーい」と目をキラキラさせるものの、勉強はやりたくない。
「あ~何かやらせなくては」と、母である私は焦りました。そんな時、「もういいや~ドリルなんてやらなくたってなんとかなる。」と開き直り、ゆったりかまえることができたのは、「娘は、さんすうの絵本を喜んで読んでいた時代があるからきっと大丈夫」という根拠があるようなないような自信でした。
もしかしたら、娘は、さんすうの絵本など読まなくても学習についていけたかもしれません。一人っ子のせいか、子育てをしていると常に迷い不安になります。いろんな知識をため込み、悩み、自信を無くします。
そんなとき、「これをやったから大丈夫」というおまじないのようなものは、子どもにとってというより私にとって良かったです。そして、それが巡り巡って子どもにも還元するんだな~と思いました。
今回のように、時間、お金、精神的にもハードルが低く、自然と楽しく実践できる絵本は私たち親子にとってぴったりでした。
幼稚園時代に、ドリルで楽しそうに勉強できるお友達が何人もいました。すごいな~なんて隣の芝生が青く見えることはしょっちゅうです。子どもにとって何が分かりやすいかということ、楽しいと感じられることは、一人ひとり全然違うものだな~と痛感します。
おまけ~さんすう関連記事
それにしても、、、、
体育専攻の友人が小学校の算数教育にはまり算数少人数指導に燃えたり、音楽専攻の知人が算数教育研究会に出て研究発表したりしていくという例を見てきました。その時はピンときませんでしたが、算数教育って魅せられるものがあることがようやく分かりました。
もしかしたら、このブログでも算数カテゴリーが登場するかもです。