ついに、念願の家族で国立近代美術館!
"作品に触れてはいけない""大きな声を出してはいけない"など、美術館は、子連れにとって基本的にハードルが高いお出かけスポットです。インタラクティブな作品は子連れにも優しいので、娘でも行けそうな現代アートの展覧会をねらって美術館に足を運んできました。
けれど、この東京国立近代美術館は、まさに触れてはいけない作品ばかりのオンパレード。小学校に入った娘は、マナーが守れるようになったので連れて行くことにしました。
企画展ではなく常設展(MOMATコレクション)なら、大人500円子ども無料で入場できるのも魅力です。
大きな声では言えませんが、この国立近代美術館がある竹橋って休日の穴場スポットなのです。とにかく空いている。インフルが猛威を振るっている時期のお出かけとしては安心していける場所です。しかも、目玉となるような企画展がない時期の美術館ってゆっくり落ちついて過ごすことができるのでおすすめです。
今回は、そんな国立近代美術館での子どもとの鑑賞について書いてみたいと思います。
子ども用鑑賞カード
学習指導要領では、鑑賞教育について触れられています。この鑑賞教育って学校で行われるだけではありません。美術館でも積極的に子ども用プログラムを実施しているところがほとんどです。ただ、その対象年齢や実施回数、内容は美術館によって異なるので、お子さんの年齢が小さすぎると難しい場合もあります。
もちろん、近代美術館でもこんな鑑賞カードがあります。このカードをもとに、作品をあちこち見て回ります。
▼表
▼裏
▼内側
▼ビンゴカード
▼ビンゴカード裏
正直、ちょっと物足りないかな?と思ったのですが、充分でした。というのも、「この美術館は私たち子どもも受けいれてくれる」という安心切符的な意味合いが娘には大きかったようです。「まわりはみんな大人だし、子どもはほとんどいない。つまんないのかな?」という不安を取り除いてくれました。そして、作品を見はじめる導入のような役割はちょうど良かったです。本当は、アントニー・ゴームリーの作品に対して「まねっこ遊びをしてみよう」と書かれているのですが、娘の頭の中では、「絵や彫刻作品のまねっこをして遊んでみよう」と勝手に変換されて、自分が真似をできそうな作品を見つけポーズを決めて遊んでいました。結局、カードは途中からほったらかしで、作品を見て真似て遊んでいました。
もう少し大きい年齢のお子さんだったら、物足りないカードかもしれませんが、7歳の娘にはちょうど良かったです。
子どもの鑑賞の様子
最初、写真は撮ってダメだと思っていました。ところが、途中でOKということを知ったので作品の紹介も途中からです。
▼この彫刻では「コマさんみたーい。」なんて真似をしていました。
▼こちらの作品の登場人物の真似をして遊んでいました。
猪熊弦一郎の《○○方面鉄道建設》
戦時中の貴重な記録画です。まだ、戦争について話をすることはありませんが、記憶に残ってていつかこの話ができるようになったらいいな。ちょっと遠慮して遠くからはっきり見えないようにとってしまいましたが、近くで見ると圧巻です。
ちなみに、猪熊源一郎さんといえば、旧三越百貨店の包装紙をデザインされた方です。
▼これも仏様の真似をしてました。
川端龍子《洛陽攻略》
下から本物の大仏様を見上げているような構図は圧倒されます。娘も長く立ち止まっていました。
▼目がちかちかするー。と言いながら見ていました。
▼私が大好きな作品ですが、これはスルー。。。どんなにおススメしてもスルー。。。残念です。
野田哲也《日記 1976年8月19日》
写真とシルクスクリーンで作り出される雰囲気がたまらなく大好きで、学生時代野田哲也さんの真似して失敗ばかりしていました。暗室で過ごした時間が懐かしい。。。でも娘には全くその良さが分からなかったようです。まあそりゃそうですよね。子どもにとって白黒って興味の対象外になりやすいです。
▼白黒でも、見ていた作品はこれ。
ハンネ・ダルボーヴェン《世界劇場79》
365枚の劇場の絵が並んでいます。毎日違う登場人物が現れている様子が描かれているのですが、これはまるで漫画のイラストのようで興味が沸いたようです。あと、何といっても圧倒的枚数。365枚のパネルがずらーって並ぶとやっぱり引き込まれます。
▼ちょっと休憩。
何気なくおいてありますが、これ柳宗理のバタフライスツール!
天童木工 バタフライスツール ローズウッド S-0521 RW-ST
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インダストリアルデザインの巨匠、柳宗理の代表的な作品です。
さすが国立近代美術館。心して座りなさいよ~と娘に言いながら座りました。座り心地はまあ普通なんですけど、このデザインをもっとじっくり見られるようになるにはもう少し年齢を重ねないとだめですね。
▼日本画コーナー。だいぶ疲れが出てきたようで娘はぼんやり見ていました。そしてまたちょうどよいところに椅子が。順番に座りながら作品を見ました。
剣持勇 《ラタン スツール》
こちら、さりげなく置かれていますが剣持勇のデザインです。最初誰の作品か分からなかったのですがラタンの作り方が見覚えあり、絶対有名なデザイナーだと信じて、いろんな言葉を検索窓に入れまくって見つけました。剣持勇さんは、日本のデザイン草創期を支えた方です。ちなみに、ヤクルトのデザインも剣持勇だったんですね。あの、小さくて持ちやすいスーパーにうっているやつ。知らなかった。剣持デザイン研究所 Kenmochi Design Associates [ KDA ]
▼彫刻作品って真似をしやすいようです。二作品ともポーズを決めて遊んでいました。
船越保武《原の城》
船越桂さんのお父様の作品。しかも代表作です。
でも、こちらの作品も島原の乱を題材にした重いテーマ。真似をして遊ぶなんてこの罰当たりがぁと、怒られそうですが、島原の乱が何かも全く分からない娘。いつか、そういう歴史を学ぶときに、点と点が結びつくように何かを感じてくれたら嬉しいなと思います。今は、こういう作品があるということだけでも分かってくれたらそれでよしだと思います。
ただ、こういう彫刻作品って子どもが体を使って真似しやすく、鑑賞教育の入り口としてはとてもよい教材に感じています。それに、彫刻作品がある空間に子どもが入り込むとまた別の作品のようにも感じるというか、鑑賞する私も違う感じた方を共有できるような感じがして不思議です。あ~静岡県立美術館とか箱根の彫刻の森に連れて行きたい。
▼子ども用鑑賞カードにも載っていた作品です。この作品に「何を見ているんですかぁ」とふざけて話しかけていました。
アントニー・ゴームリー《反映/思索》
全く同じオブジェクト。違いは外にいるか中にいるかだけ。今私たちが見ているこの時に差異は顕著に表れないけれど、もっと年月を重ねると外と中の違いが目に見えて分かるようになっていくでしょう。特に、外にいる彼は大きな変化を遂げていくはず。その時間の流れをゆっくり感じる作品です。所蔵品ならでは展示作品ですよね。娘と一緒に10年20年30年一緒に見ることができたらいいなあと思う作品です。30年後なんてどうなってるんだろう。ちなみに、彼の作品は東京オペラシティのホールでも見ることができます。あの作品も大好き。
▼やった!森山大道。「見ようよ」と言っても、スルー。「もうちょっとお母さん見たい」と言っても、スルー。いつか一緒に見られる日はくるのだろうか。
森山大道《にっぽん劇場》
ざっと、膨大な枚数の写真を一つに飾ることで一枚一枚見るのとは違う印象を感じられるのは美術館ならではですね。もっとじっくり見たかったな~。
▼そろそろ展示会場も終盤。座ってじっくり見られるこの作品はちょうど良い休憩でした。
高嶺格《God Bless America》
2トンの粘土で顔を作り続ける男女のクレイアニメです。クレイアニメといったら、作品だけがこまどりで撮影されるものが多いですが、これは作っている様子、休憩している様子、寝ている様子など生活全部も撮影されています。それがハイスピードで流れることで時間の流れを感じるとともに作品が動いている様子も楽しめるインスタレーションです。粘土が動く!作っている様子が早送りで面白い!そんな感じで娘も休憩がてらじっくり見ちゃいました。
でもね、これ、超早送りですがベッドシーンもあるんです。あら、どうしようと思った時にはすでに遅く。でも、3~5秒くらいなのでまあいいかと諦めました。距離もかなり離れている映像で何をやっているか一瞬では分かりにくい演出になっていますし。娘の心の中で”あれなんだったんだろう”が、”そういうことか”に気づくお年頃にまた見せたいですね。
この作品、横浜の美術館で一度見たことがあるのです。大好きな作家さんで、いつかまた見たいと思っていました。まさかこんなところで出会えるなんて感激でした。
*****
まだまだ作品はあったのですが、疲れてしまい途中でおわりにしました。結局2時間近く美術館にいたようです。
それにしても、国立近代美術館も素敵ですが、毎日新聞社が入っているパレスサイドビルディングもかっこいい。設計は日建の林昌司。中野サンプラザの設計もされた方です。国立近代美術館の帰り道に見える姿は青空にはえてカッコいい。昭和の映画を思いださせるような出で立ちは圧巻です。でも、娘は、当然のごとくスルー。。。。どんなに熱く語っても、スルー。残念です。娘が大きくなるまでこの建物は残っていてくれるかな。竹橋の駅に向かう途中にぜひ見上げてみてください。近年作られるビルとは全然違うデザインにシビれること間違いなし(?)。
おわりに
娘が赤ちゃんの頃から美術館に足を運んできました。おかげさまで絵を描くのが大好きな子に成長し、美術館に対しての抵抗はありません。むしろ、家族3人でお出かけできるスポットとして、「美術館に連れて行って」と言うようになりました。まあ、美術館に行くときはたいていお昼ご飯が外食になったり、おやつが美味しいケーキになったりするのが目当てかもしれませんが。
ただ、今回のような静的な展覧会は娘がつまんないと諦めてしまうものかもしれないと不安でした。一か八かでえいや!と強引に連れて行きましたが、長時間滞在できたことを思うとまんざらでもなかったのかもしれません。もともと、人混みが嫌いな子なので、素敵な会場で静かに過ごせるのもよかったのかもしれません。
美術館と鑑賞とカメラ
それにしても、自由に写真が撮れるのもいいですね。ここには載せられませんが、まるで観光スポットのように名作と一緒にポーズをとる娘の写真がたくさん撮れました。逆に娘が自分のスマホで写真を撮りながら見るのも楽しかったようです。派手さのない地味な楽しみ方ですが、普段の生活では味わえない充実した時間を過ごせたようです。
カメラOKなんて、私が学生の頃には信じられません。きちんと自分の目におさめなきゃ、、、。なんて思いますが。自分の目で見たときには気づかない発見を感じることがあります。もちろん展覧会の意向にもよるのですべてがOKではないので気をつけなくてはいけませんが、最近すごく増えています。普段からかカメラを使うことになれているお子さんだったら、今回のような静的な展覧会を楽しむアイテムの一つになると思います。
美術館を楽しい!と思えるのはお子さんによるので誰にでもおススメできるお出かけスポットではありませんが、同じように美術館好きな方のために記録してみました。
鑑賞について、九段下について、まだまだ書きたいことがたくさんあります。けれど、思いのほか長い文章になってしまったので、また気が向いたらだらだら書いてみたいと思います。
関連過去記事
振り返ってみれば、0歳から一緒に美術館に行っていました。今思えばよく連れて行ったなと思います。