夫は、子どもをもつことにとても慎重でした。
幸か不幸か、私たち夫婦は結婚してから、なかなか子どもを授かることができず、長い時間二人で過ごしていました。そして、夫は子ども授かることに積極的になれず、できなきゃできないでよいと言いきっていました。その言葉には、子どもを持つことへの不安や父になることへの自信のなさも垣間見られました。もともと風まかせに生きていたいという願望が強い彼ですから仕方がありません。子どもがいたら自分のやりたいことが制限されるのが嫌だったのではないかと思っていました。それに、彼からは「子ども好き」という印象は全くなく、むしろ「子どもは嫌い」なんじゃないか?と思うほど、子育てを共にすることに不安を感じる性格でした。
私から見た主観ですが。
そして、長い年月を経てようやく待望の娘を授かることができました。
娘がまだ言葉をしゃべれない赤ちゃん時代は、ずいぶんイライラしていたように思います。その時のことを邂逅して「あの時は辛かった」と今でも彼はそういいます。誰しも得意・不得意なものはあります。夫は、とても赤ちゃんのお世話をするのが苦手でしたし、そんな彼の姿を見て私もイライラしていました。お互い愚痴合戦の日々でした。
ところが、
娘が言葉を覚えいろんなお話をするようになった頃でしょうか、
いつの間にか夫は娘にデレデレ。
今まで見たことのない夫の姿を見るようになりました。
あれ?夫ってこんな性格だったっけ?というくらい変わりました。
私と娘との間に流れる空気と、夫と娘の間に流れる空気は全然違います。
娘も甘えさせてくれるお父さんが大好きです。
けれど、一緒に生活していても、毎日会えるとは限りません。
ご飯を一緒に食べられる日は週末だけでしょうか。
すれ違いの生活を送っている我が家ですが、今年の夏休みは特別です。
久しぶりに長い休暇をとることができ、夫の故郷に帰省できました。
夫が幼い頃に通った小学校、懐かしい電車、
娘にとってはすべてが新鮮です。
そして、娘は、祖父母に会えるだけでなく、
久しぶりにお父さんにべったり甘えることができます。
土日に家族で出かけることもありますが、夫は仕事のことに半分気をとられながら無理やり行くことが多いものです。もしくは、一日中寝ているお父さんです。
今回のように、仕事を忘れのんびり穏やかに過ごすことができるのはとても貴重な時間でした。
夫の母校で遊び疲れてベンチに座った二人の会話は私には聞こえなかったけれど、きっと他愛ないものでしょう。「お母さんはこっち来ないで!」という娘は、普段仕事で忙しいお父さんを独り占めできてさぞやご満悦のことでしょう。特別なことをしているわけではないのですが、二人の間に流れる空気はなんだかとてもあまく感じました。
そんな二人をスマホ越しでみた風景は、なんだか微笑ましく思い出に残る一枚でした。
娘が生まれる前の夫が、この写真を見たらどう思うのだろうといろいろ想像してしまいました。
*昨年は、ワリと辛い夏でしたが、今年は最高の夏でした。